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Channel: カープニッキ。
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プロ野球バッシングの陰で嗤う

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 「ミスディレクション」という言葉がある。 手品やミステリー小説のファンならお馴染みの言葉で、「観客の判断力を間違ったものへ向けさせる技術」を意味する。 一昨日の夕方ニュースをご覧になった方は、うんざりする思いにならなかっただろうか。 どこの局をつけても、まず出てくるのは「清原、出所」のニュース。 そしてNPBにおける¥陣問題である。 「果たして、これのどこが重要なニュースなのだろうか?」  「他にもっと報じるべきニュースを報じていないのではないか?」 こう思った方も少なくないはずである。 ボクは嫌気がさしてケーブルテレビにチャンネルを変えた。 見るのはCNNjである。 当然、清原のニュースなどやっていない。 そこでやっていたのは、ブラジルのオリンピックの話だった。 オリンピックの開催を間近に控える中、大規模なデモが発生しているという話である。 現在のブラジルの繁栄は、大多数の貧しい人には届いていないのにも関わらず、オリンピックでさらに金持ちが儲けようとしているという話である。そして多くの政治家がその金持ちの中に入っているというわけだ。 そこにジカ熱の問題も加わる。 アメリカ人の女性アスリートが、ブラジルオリンピックへの参加を躊躇する気持ちがある、という話である。 妊娠してジカ熱に感染したら高確率で奇形児が生まれるかもしれないわけだから、女性アスリートにとってみれば当然気になる状況であろう。 それに対し、アメリカのオリンピック委員会はジカ熱の不安があるなら参加を辞退しても良い、との考えを示したとのことだ。 次にやっていたのはFIFAの話である。 汚職で辞めたブラッター前会長に代わる新会長が選出されたわけだが、その新会長が元の幹部たちに不正に入手した資金の返還を求めたとのことだ。 南アフリカW杯では不正招致をめぐって1000万ドル(約11億円)が動いていたというのだから驚きである。 何せサッカー協会の運営をする理事たちが率先して汚職に手を染めていたわけだから、事の重大性は言うまでもない。 実際にソニーを始めとするスポンサーの撤退が相次ぎ、理事の逮捕が続く状況である。 さて、なぜこれらのニュースが日本ではほとんど注目されないのだろうか。 なぜなら、このプロ野球にまつわる一連の問題ばかりが報道されているからである。 まさにミスディレクションである。 オリンピックにまつわる話では、日本では新国立競技場をめぐる問題があった。 1300億円をかけて建設される新国立競技場に、聖火台がなかった問題である。 またジカ熱の問題などは、アスリートの安全に関わるし、そもそもアスリートに限った問題ではない状況になって来ている。 蚊のみならず性交渉でも感染が広がるので、女性アスリートに限らず、パートナーが妊娠している男性アスリートも気を付けなければいけない問題である。 アスリートたちの安全を優先するなら、しっかり考えて対応しないといけないことだろう。 またFIFAでは11億円以上が不正にやり取りされていたわけだが、今の日本ではNPBでの1000円単位のやり取りの方が問題にされているわけである。 馬鹿馬鹿しいという他はない。 今回の件で大半のメディアはネタが出来たと大喜びである。 そしてオリンピックやサッカーのイメージ低下によるビジネスへの悪影響を懸念するものにとっても、注目が完全に逸れる現在の状況は喜ぶべきことだろう。 奇しくも、どちらとも同じ広告代理店が請け負っており、快哉を叫んでいるに違いない。 しかし野球界にとっては深刻な状況である。余りにもこの攻撃が長く続くようであれば、スポンサーの撤退などを懸念せねばならないだろう。 NPBの広告代理店さんにはイメージアップに頑張って働いてほしいところであるが、日本代表選手の名前を間違えたりするようでは、あまり期待できないか。 今のバッシングで利益を得るものがいる以上は、状況は大きくは変わらないのかもしれない。 誤解を招かないように言うなら、ボクは野球もサッカーも好きだし、他のスポーツも基本的には好きである。 なぜならアスリートの姿を見るのが好きだからである。 彼らは、人間の究極の到達点の一つの姿である。 彼らはボクたちと同じ人間である。 ボクたちと同様に悩みもたくさん抱えている。 欲望だって人並みにある。 何事にも品行方正な神様ではないのだ。 そんな彼らが、競技に合わせて自分の心と体を鍛え上げ、プレッシャーに打ち勝って、有り得ないような素晴らしいパフォーマンスを見せているのだ。 ボクが感動するのは、ボクたちと同じ人間がそこまで研ぎ澄ませた姿なのである。 しかし昨今のスポーツ商業主義が要求するのは、現実には有り得ない、全てにおいて”クリーン”な象徴としてのアスリート像である。 クリーンさを要求するのが当然とされている。 これは実際には有り得ないとボクは思う。 しかし大多数が歓迎するのは、そのような有り得ない虚像のアスリートという状況である。 常にファンに明るく対応し、品行方正で、肝心の競技ではしっかりと結果を残す。 これらのいずれかが欠ければ、バッシングされる。 前W杯のサッカー日本代表などのように。 ちなみにボクは本田選手は大好きであるし、彼の生きざまを尊敬している。 そして今回のNPBの問題もそうである。 野球賭博などの反社会勢力の資金源になるような行為は論外だが、そうでないものまで規制する必要はどこまであるのか。 本当に今回の問題は、人間として許されないような行為なのかと、多くの人には考えてほしいと思う。 そして実像のアスリートに感動できる人が増えることを願う。

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